測定方法と尺度について
ヘルスリテラシーの定義は、健康情報を入手、理解、評価、活用することができる能力とされています。ヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションという3つの領域で用いられ、複数の能力が含まれます。ヘルスリテラシーは包括的で広い能力が必要ですが、それらを測定するためのツールもたくさん開発されています。それらは今や200以上にもなっていてアメリカの国立医学図書館とボストン大学がデータベースを公開しています。今回はヘルスリテラシーを測定するツールについて見ていきましょう。
ヘルスリテラシーの測定
そもそもは、リテラシーを測定するために開発されたツールが基になっています。リテラシーとは、識学能力のことですが、これは読み書きだけでなく計算の能力も含まれます。ちなみに、数学の能力は、ニュメラシーと呼ばれています。これは、リテラシーとナンバーを組み合わせた造語です。
ヘルスリテラシーと言われる健康に関する読解力と理解力を測定するために開発されたツールは、REALMやTOFHLAがあります。これらをベースにたくさんの研究がされています。このツールは、分量が多く病院などでヘルスリテラシーが低い患者を見つけ、その人に合ったコミュニケーションをするという目的には使用が難しかったため、簡易版が次々と開発されていきました。
また、がんや糖尿病など特定の病気に特化したツールも開発されています。インターネットの健康情報を活用できるかといったeヘルスリテラシーを測定するツールまで登場しています。
ポピュラーなヘルスリテラシー尺度
基礎となったヘルスリテラシー尺度であるREALM(Rapid Estimate of Adult Literacy in Medicine)とTOFHLA(Test of Functional Health Literacy in Adults)について解説します。
REALMは、125個の医学用語をちゃんと発音できるかどうかテストします。単語数を省略した66項目短縮版やREALM-R、REALM-SFなどの派生系もあります。正確に発音できた単語数が得点となってヘルスリテラシーの判断基準となります。
TOFHLAは、17問の数的基礎力と50問の読解力のテストから成り立っています。読解力のテストでは病院などで実際に目にする文章から穴埋め形式で出題されます。数的基礎力では、服用方法などのラベルから必要な数的情報を読み取れるかどうかをテストします。4問の数的基礎力と36問の読解力に簡略化されたものもあります。他にもNVS(Newest Vital Sign)やSILS (Single Item Literacy Screener)などがあります。これらヘルスリテラシー尺度では診察のときにヘルスリテラシーが低い患者を発見するのに役立ちます。
-
患者の自己決定と看護師の役割
「良質の医療を受ける権利」「選択の自由の権利」「自己決定の権利」「患者の意思に反する処置」「情報に対する権利」「守秘義務に対する権利」「健康教育を受ける権利」「尊厳に対する権利」など、患者の権利がクローズアップされていますが、基本的に患者や家族が自らの意思で治療方針を決定することが大切です。看護師は医師と患者をつなぐ架け橋的な存在となり、患者に寄り添うことが重要な役割と言えるでしょう。
-
ヨーロッパ、アジア諸国との比較
世界的にヘルスリテラシーを測定する尺度の研究が進められています。ヨーロッパのHLS-EU-Q47という調査方法が有名で10カ国以上に翻訳され各国でヘルスリテラシーの調査が行われています。各国の調査結果をまとめた論文を調査すると日本のヘルスリテラシーの低さが浮き彫りになりました。ヨーロッパだけでなくアジア諸国と比べても日本のヘルスリテラシーは最も低い結果となっています。ただし、この結果は日本だけ調査方法が違う点も注意が必要です。
-
ヘルスリテラシーの定義について
リテラシーとは、元々は読み書きの能力のことを言います。ヘルスリテラシーは、健康情報に対して入手、理解、評価、活用をするための知識や能力という意味で使われます。また、健康情報に基づいて意思決定される健康を決める力とも言えるでしょう。ヘルスリテラシーが低いと健康に影響があると言われています。また、ヘルスリテラシーが高い人は、健康的であるだけでなく仕事のパフォーマンスが高い、問題解決力が高いなどの傾向もあるようです。