より良い医療と健康のための「ヘルスリテラシー」

ヘルスリテラシーに対する意識を諸外国と比較

ヨーロッパ、アジア諸国との比較

ヨーロッパ、アジア諸国との比較

世界的にも注目されているヘルスリテラシーですが、海外と比べて日本のヘルスリテラシーはどのようなレベルなのでしょうか。ヨーロッパと比較したデータから考察していきましょう。

ヨーロッパと比べて

ヨーロッパでは、HLS-EU-Q47(European Health Literacy Survey Questionnaire)という個々の能力だけでなく様々な場面で測定できるヘルスリテラシー尺度があります。質問項目は47あります。4つの能力を3つの領域で測定するもので、12の次元にわたって測定できます。このHLS-EU-Q47は、10カ国以上で翻訳されています。
日本でも調査が実施されたデータがあるので紹介します。調査は、全国20~69歳の男女を対象に2014年にウェブ上で実施されています。有効回答数は1054です。この結果では、47項目で「難しい」と回答した人がEU8カ国(オーストリア、ブルガリア、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、オランダ、ポーランド、スペイン)の平均値よりも高いことがわかっています。また、総得点の平均値は、EUが33.8なのに対して日本は25.3と低く、ヘルスリテラシーを不足とした割合は、EU47.6%に対して日本は85.4%と非常に高く全体的にEUよりもヘルスリテラシーがとても低いという結果となっています。

アジアと比べて

ヨーロッパで普及しているHLS-EU-Q47は、日本をはじめアジア諸国でも様々な調査が実施されています。2017年に発表されたデータを見てみると、平均点が最も高いのは、台湾で34.4。次が32.9のマレーシア、31.6のカザフスタン、31.4のインドネシア、31.3のミャンマー、29.6のベトナムとなっています。日本は25.3ですので、どの国よりも低い数字となっています。ただし、この調査は日本だけがウェブ上で行っており、他の国は面接で調査している点に注意が必要です。ウェブ上の自記式調査では比較的素直に回答するのに対し、面接調査では社会的に望ましくない回答をしやすいものです。よって、この平均点の差はもっと少なくなる可能性が高いと思われます。しかしながら、日本の回答者はウェブを使えるリテラシーがあるという点では、他国よりも基礎的なリテラシーが高く経済的余裕がある人が多いと予想されるため、その点を考慮してもやはり日本のヘルスリテラシーは世界と比較しても非常に低いということがわかります。また、ウェブを使えたとしても健康情報を使いこなす難しさがあると言えるでしょう。

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