課題について
現在、新型コロナウイルスに関する情報が氾濫しています。健康情報を正確に判断する力であるヘルスリテラシーが問われています。ヘルスリテラシーの課題について考えてみましょう。
デマ情報に惑わされない
インターネットやSNSが普及した現代、新型コロナウイルスに関する情報だけでなく、マスク不足になったときなどにも科学的根拠のないデマ情報が飛び交っています。新型コロナウイルスの感染拡大とともに拡散され正確な情報入手が必要となっています。特に日本においては、アメリカのCDC(疾病対策センター)のような健康情報を国民に正確に伝えることを目的とした公的機関が不十分なことが問題となっています。これは新型コロナウイルス発生前から問題だったことで正しい医療情報を国民が入手できないと指摘する専門家も少なくありません。
新型コロナウイルスで見えた課題
日本で初めての感染者が出てから、各種メディアではたくさんの新型コロナウイルスに関する情報を発信しましたが、疑問を感じるものも少なくありませんでした。厚労省が早くから手洗いの徹底を呼びかけたことは評価できますが、メディアでは増える感染者数や死亡者数だけを大々的に報道し、視聴者を煽っていました。トイレットペーパーが品薄になっているという情報だけを伝えると、消費者を不安にさせ買い占め行動を誘発するだけです。感染者がいれば回復者もいるわけですから、入院者と退院者の両方を伝えるなど偏らない情報発信が重要です。また、研究者が専門用語を連呼するようなものではなく、広く一般の人が理解できる形で情報発信することが大切です。
信頼できる情報源がない
アメリカなどでは、医療のコミュニケーションを専門に扱う人を体系的に育成するシステムがあります。また、それを国民に伝える公的機関もあります。しかし、日本ではそのような機関もなければ専門家も少ないのが実情です。国際的には健康情報の伝え方に対する研究が盛んですが、日本はまだ少ないのも問題です。新型コロナウイルスにおいても感染症の専門家はたくさんいますが、それを国民にやさしく正確に伝えることができるヘルスコミュニケーションの専門家がいないことも問題です。インターネットにおいてもこれらの問題は少なくありません。アメリカでは国立医学図書館が一般向けに総合的な情報を提供するサイトを開設していたり、論文を検索できるサイトもたくさんありますが、日本には医学、健康科学などの論文を無料で検索できるサイトはありません。
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患者の自己決定と看護師の役割
「良質の医療を受ける権利」「選択の自由の権利」「自己決定の権利」「患者の意思に反する処置」「情報に対する権利」「守秘義務に対する権利」「健康教育を受ける権利」「尊厳に対する権利」など、患者の権利がクローズアップされていますが、基本的に患者や家族が自らの意思で治療方針を決定することが大切です。看護師は医師と患者をつなぐ架け橋的な存在となり、患者に寄り添うことが重要な役割と言えるでしょう。
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ヨーロッパ、アジア諸国との比較
世界的にヘルスリテラシーを測定する尺度の研究が進められています。ヨーロッパのHLS-EU-Q47という調査方法が有名で10カ国以上に翻訳され各国でヘルスリテラシーの調査が行われています。各国の調査結果をまとめた論文を調査すると日本のヘルスリテラシーの低さが浮き彫りになりました。ヨーロッパだけでなくアジア諸国と比べても日本のヘルスリテラシーは最も低い結果となっています。ただし、この結果は日本だけ調査方法が違う点も注意が必要です。
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ヘルスリテラシーの定義について
リテラシーとは、元々は読み書きの能力のことを言います。ヘルスリテラシーは、健康情報に対して入手、理解、評価、活用をするための知識や能力という意味で使われます。また、健康情報に基づいて意思決定される健康を決める力とも言えるでしょう。ヘルスリテラシーが低いと健康に影響があると言われています。また、ヘルスリテラシーが高い人は、健康的であるだけでなく仕事のパフォーマンスが高い、問題解決力が高いなどの傾向もあるようです。