重要性について
人間の生命や生活の質の向上にはヘルスリテラシーが必要とされています。ヘルスリテラシーが低ければ病気の予防もできませんし、病院を受診するのも遅れる可能性があります。これらの状況は近年でもよく見られる現象です。ヘルスリテラシーが低い集団の特徴として低学歴・合併症が増えるという研究データもあります。
ヘルスリテラシーが低いことによって起こること
前述の通り、ヘルスリテラシーが低いと病気の予防ができなかったり、健康診断に行かない、または健康診断で異常が見つかっても病院に行かないといったことが起こります。血液検査のデータなどから異常と診断されたとしても自覚症状がなければそのままにし、治療をしないといったことが考えられます。そのような人たちはやがて心筋梗塞や脳卒中といった大病をするリスクが高くなるのです。
心の病気についても同じことが言えます。うつ病の症状が出ていてもまわりにいる人たちが気付かず病気が進行してしまうことがあります。ヘルスリテラシーがあり、初期症状や対応についての知識があれば早期治療が可能になるはずです。
また、最近ではインターネットによって簡単にサプリなどの健康食品が手に入る時代になりました。健康に関する情報もすぐに検索できます。ヘルスリテラシーを高め情報の正確性を見極める目を持たなければ他人はおろか自分の健康さえ守れないかもしれません。
ケーススタディ
高血圧の状況が続き、脳出血になったという例を基にヘルスリテラシーについて考えてみましょう。医療機関を受診し服薬はしていたが効果は得られなかったという想定です。
まず考えられるのは、高血圧という症状に対する知識です。血圧が高くなる原因や血圧を低くする対策について知識があり、なんらかの対策をしていたら脳出血まで至らなかったかもしれません。
もうひとつは、医師とのコミュニケーションです。日頃から血圧を測定し、受診時だけでなく日常の数値を提示したり、生活習慣について改善の相談をしたりできたかもしれません。慢性的な疾患においては、医療従事者とのコミュニケーションはとても重要です。患者は受診しているから大丈夫。医師は薬を処方しているから大丈夫と考えがちです。より客観的に判断し、どのような数値まで改善するかなど具体的な目標を立てて治療していくことが大切です。
ヘルスリテラシーが高い人はより健康的で仕事のストレスにも強い傾向があるそうです。問題解決力が高く他の人からサポートを受けるのも上手な人が多いというデータもあります。ぜひ、ヘルスリテラシーを高めて健康で楽しい毎日をおくりましょう。
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患者の自己決定と看護師の役割
「良質の医療を受ける権利」「選択の自由の権利」「自己決定の権利」「患者の意思に反する処置」「情報に対する権利」「守秘義務に対する権利」「健康教育を受ける権利」「尊厳に対する権利」など、患者の権利がクローズアップされていますが、基本的に患者や家族が自らの意思で治療方針を決定することが大切です。看護師は医師と患者をつなぐ架け橋的な存在となり、患者に寄り添うことが重要な役割と言えるでしょう。
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ヨーロッパ、アジア諸国との比較
世界的にヘルスリテラシーを測定する尺度の研究が進められています。ヨーロッパのHLS-EU-Q47という調査方法が有名で10カ国以上に翻訳され各国でヘルスリテラシーの調査が行われています。各国の調査結果をまとめた論文を調査すると日本のヘルスリテラシーの低さが浮き彫りになりました。ヨーロッパだけでなくアジア諸国と比べても日本のヘルスリテラシーは最も低い結果となっています。ただし、この結果は日本だけ調査方法が違う点も注意が必要です。
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ヘルスリテラシーの定義について
リテラシーとは、元々は読み書きの能力のことを言います。ヘルスリテラシーは、健康情報に対して入手、理解、評価、活用をするための知識や能力という意味で使われます。また、健康情報に基づいて意思決定される健康を決める力とも言えるでしょう。ヘルスリテラシーが低いと健康に影響があると言われています。また、ヘルスリテラシーが高い人は、健康的であるだけでなく仕事のパフォーマンスが高い、問題解決力が高いなどの傾向もあるようです。