看護師や医療従事者向けの「ヘルスリテラシー」
ヘルスリテラシーが低いということは、自身の健康に関して適切な情報の取捨選択ができず、最適な意思決定もできない(難しい)ということです。医師や看護師などの医療従事者は患者と接するにあたり、患者のヘルスリテラシーに合わせたコミュニケーションを要します。また、女性の社会進出が進む中で、働く女性のヘルスリテラシー向上も社会的課題となっています。女性特有の症状への対処行動など、女性の行動変容を促す役割として看護師への期待が高まっています。
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働く女性のためにできること
働く女性の活躍が進む中で、女性のヘルスリテラシー向上や女性の健康に対する取り組みが社会の注目を集めています。月経前症候群や月経随伴症状、更年期障害など、女性特有の症状による仕事のパフォーマンスへの影響について調査したところ、ヘルスリテラシーが低い人ほど影響が大きいと感じていることがわかりました。看護師はより身近な存在として、女性のヘルスリテラシー向上と対処行動の変容を促すような関わり方が期待されています。
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ヘルスリテラシーが低い人への伝え方
医療従事者は患者とのコミュニケーションにおいて、患者のヘルスリテラシーの低さを改めて認識しなければなりません。健康情報を理解する力が低く、適切な判断力も持たない患者に対し、保険医療の専門家として健康情報をどう伝えるかはとても重要な課題です。時間をかけて説明する、専門用語を使わずにわかりやすい言葉を使う、繰り返し説明する、患者の理解度を確認するなど、専門家から患者の目線に下りて接することが求められます。
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患者の自己決定と看護師の役割
患者が自分の意思で治療や医療を選択しなければならない局面において、患者とその家族はその病状や治療に関してしっかりと理解する必要があります。看護師だけでなく、患者に関わる医療従事者はその患者の心情を汲み、尊厳を守り、権利保護に配慮した丁寧なコミュニケーションを心掛ける必要があるでしょう。これらは簡単なことではありません。患者の意思決定をサポートするためにも、看護師は、患者とその家族に寄り添って信頼関係を構築することが大切です。
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患者の自己決定と看護師の役割
「良質の医療を受ける権利」「選択の自由の権利」「自己決定の権利」「患者の意思に反する処置」「情報に対する権利」「守秘義務に対する権利」「健康教育を受ける権利」「尊厳に対する権利」など、患者の権利がクローズアップされていますが、基本的に患者や家族が自らの意思で治療方針を決定することが大切です。看護師は医師と患者をつなぐ架け橋的な存在となり、患者に寄り添うことが重要な役割と言えるでしょう。
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ヨーロッパ、アジア諸国との比較
世界的にヘルスリテラシーを測定する尺度の研究が進められています。ヨーロッパのHLS-EU-Q47という調査方法が有名で10カ国以上に翻訳され各国でヘルスリテラシーの調査が行われています。各国の調査結果をまとめた論文を調査すると日本のヘルスリテラシーの低さが浮き彫りになりました。ヨーロッパだけでなくアジア諸国と比べても日本のヘルスリテラシーは最も低い結果となっています。ただし、この結果は日本だけ調査方法が違う点も注意が必要です。
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ヘルスリテラシーの定義について
リテラシーとは、元々は読み書きの能力のことを言います。ヘルスリテラシーは、健康情報に対して入手、理解、評価、活用をするための知識や能力という意味で使われます。また、健康情報に基づいて意思決定される健康を決める力とも言えるでしょう。ヘルスリテラシーが低いと健康に影響があると言われています。また、ヘルスリテラシーが高い人は、健康的であるだけでなく仕事のパフォーマンスが高い、問題解決力が高いなどの傾向もあるようです。