ヘルスリテラシーが低い人への伝え方
ヘルスリテラシーが低い人は健康でいるための意思決定ができずリスクの高い行動をとってしまいがちです。健康管理ができず入院も増えるでしょう。ヘルスリテラシーの向上は自らの努力が必要ですが、医療提供者もより伝わりやすいコミュニケーションをとることが大切です。国民全体のヘルスリテラシーを向上していくためには、国民や患者側だけが努力するのではなく、医療従事者と双方の努力が必要なのです。
専門家に求められるコミュニケーション
アメリカではヘルスリテラシーが低い人とのコミュニケーション方法が提唱されています。まず、コミュニケーションにゆっくり時間をかけることだそうです。患者の気が済むまで話をしていると時間がいくらあっても足りないと考える医師も多いでしょうが、アメリカの研究では患者にどれだけ自由に話してもらったとしても2分はかからなかったそうです。
次に言えることが、専門用語を使わずわかりやすい言葉で伝えることです。医療従事者同士で会話をする場合は専門用語を使ったほうが伝わるでしょうが、一般の人には伝わりません。日本でも国立国語研究所が代表的な言葉をわかりやすくする例を挙げています。絵を使う方法も紹介されています。日本では「百聞は一見にしかず」とも言われますが、言葉だけよりも視覚を交えたほうがイメージしやすく、より相手に伝わります。
情報を制限して繰り返すことも有効だそうです。一度に多くの情報を与えられると理解しづらくすぐに忘れてしまいます。そのため、必要な情報を制限し、繰り返し伝えることが大切です。また、医師、看護師、薬剤師など複数の人から同じ情報を提供することも有効です。
わかりやすいサイト
近年ではインターネットが普及し、一人一台スマートフォンを所有している時代です。情報収集はウェブがメインといっても過言ではないでしょう。アメリカではすでに多くの健康情報を国の専門機関が公開しています。日本では健康情報を検索すると怪しげなサイトやサプリメントなどの健康食品のサイトに誘導されることが多いですが、アメリカでは国の研究機関にきちんと繋がるようになっています。これは、それぞれの機関が国民に正確でわかりやすい情報を伝えようと努力をしているからです。
また、ヘルスリテラシーが低い人でも理解できているか研究を続けておりサイト制作のガイドラインも定めています。日本はこうした国立機関がなく病名や症状で検索しても民間のサイトしかヒットしません。もちろん全てが間違った情報とは言いませんが、日本でも国立大学や研究所がより優れたサイトを公開し、国全体のヘルスリテラシー向上に一役買ってもらうことを期待します。
-
患者の自己決定と看護師の役割
「良質の医療を受ける権利」「選択の自由の権利」「自己決定の権利」「患者の意思に反する処置」「情報に対する権利」「守秘義務に対する権利」「健康教育を受ける権利」「尊厳に対する権利」など、患者の権利がクローズアップされていますが、基本的に患者や家族が自らの意思で治療方針を決定することが大切です。看護師は医師と患者をつなぐ架け橋的な存在となり、患者に寄り添うことが重要な役割と言えるでしょう。
-
ヨーロッパ、アジア諸国との比較
世界的にヘルスリテラシーを測定する尺度の研究が進められています。ヨーロッパのHLS-EU-Q47という調査方法が有名で10カ国以上に翻訳され各国でヘルスリテラシーの調査が行われています。各国の調査結果をまとめた論文を調査すると日本のヘルスリテラシーの低さが浮き彫りになりました。ヨーロッパだけでなくアジア諸国と比べても日本のヘルスリテラシーは最も低い結果となっています。ただし、この結果は日本だけ調査方法が違う点も注意が必要です。
-
ヘルスリテラシーの定義について
リテラシーとは、元々は読み書きの能力のことを言います。ヘルスリテラシーは、健康情報に対して入手、理解、評価、活用をするための知識や能力という意味で使われます。また、健康情報に基づいて意思決定される健康を決める力とも言えるでしょう。ヘルスリテラシーが低いと健康に影響があると言われています。また、ヘルスリテラシーが高い人は、健康的であるだけでなく仕事のパフォーマンスが高い、問題解決力が高いなどの傾向もあるようです。