働く女性のためにできること
女性の社会活躍が進む現代において女性の健康についても政府や企業で注目が集まっています。女性のヘルスリテラシーが高まれば働く女性の健康促進につながるのではないかと日本医療政策機構も調査を進めています。
対処行動との関連
現在や過去に生理に関する異常があった人を対象に何らかの対処をしたかどうかアンケートをとってみると44.6%の人が何もしていないと回答しました。しかし、ヘルスリテラシーが高い人は、ヘルスリテラシーが低い人に比べて、市販薬の服用や医師の診察など、何らかの行動を起こす割合が2倍以上でした。また、更年期障害に対するアンケートでも同じ傾向にありました。
パフォーマンスとの関連
ヘルスリテラシーが高い人と低い人で1ヶ月の仕事に関するパフォーマンスを比較したところヘルスリテラシーが高い人の方が14%仕事のパフォーマンスが高いことがわかりました。また、生理や更年期障害などによって仕事のパフォーマンスに影響があるかどうかを調べたアンケートでは多くの人が元気なときと比較して仕事のパフォーマンスが半分以下になると回答していますが、ヘルスリテラシーが高い人はこうした症状によるパフォーマンス低下が少ないといった結果がでました。このことから、ヘルスリテラシーが高い女性は仕事ができると言えるでしょう。
婦人科の定期受診について
女性が定期的に婦人科を受診することは、自分の健康状態を把握するために重要なことですが、7割以上の人が受診をしていません。また、受診した人にきっかけを聞くと多くの人が会社の健康診断で勧められたと回答しています。自分の健康状態を正確に把握することはヘルスリテラシー向上においてとても重要なことですが、きっかけがないとなかなか行動に移せません。会社の健康診断はほぼ強制的に受けなければならないでしょうが、主婦の方なども自治体が実施する健康診断を積極的に受けるようにしましょう。
看護師が良いきっかけになる
前述の通り、ヘルスリテラシーによって体調異常時の対処行動や仕事のパフォーマンスに影響があることがわかりましたが、女性がヘルスリテラシーを向上するために医療従事者の助言が大きな影響を与えることもわかりました。ただでさえ忙しい働く女性に対してヘルスリテラシー向上の機会を提供することは難しいですが、健康診断などをきっかけとして看護師をはじめとする医療従事者が動機付けすることは効果があると言えるでしょう。看護師は女性を包括的にケアできる存在であり、女性特有の悩みを共有し知識や情報を提供できる仕事だと期待されています。
-
患者の自己決定と看護師の役割
「良質の医療を受ける権利」「選択の自由の権利」「自己決定の権利」「患者の意思に反する処置」「情報に対する権利」「守秘義務に対する権利」「健康教育を受ける権利」「尊厳に対する権利」など、患者の権利がクローズアップされていますが、基本的に患者や家族が自らの意思で治療方針を決定することが大切です。看護師は医師と患者をつなぐ架け橋的な存在となり、患者に寄り添うことが重要な役割と言えるでしょう。
-
ヨーロッパ、アジア諸国との比較
世界的にヘルスリテラシーを測定する尺度の研究が進められています。ヨーロッパのHLS-EU-Q47という調査方法が有名で10カ国以上に翻訳され各国でヘルスリテラシーの調査が行われています。各国の調査結果をまとめた論文を調査すると日本のヘルスリテラシーの低さが浮き彫りになりました。ヨーロッパだけでなくアジア諸国と比べても日本のヘルスリテラシーは最も低い結果となっています。ただし、この結果は日本だけ調査方法が違う点も注意が必要です。
-
ヘルスリテラシーの定義について
リテラシーとは、元々は読み書きの能力のことを言います。ヘルスリテラシーは、健康情報に対して入手、理解、評価、活用をするための知識や能力という意味で使われます。また、健康情報に基づいて意思決定される健康を決める力とも言えるでしょう。ヘルスリテラシーが低いと健康に影響があると言われています。また、ヘルスリテラシーが高い人は、健康的であるだけでなく仕事のパフォーマンスが高い、問題解決力が高いなどの傾向もあるようです。